愛されたストライカー そのゆえんを後進へ伝える
勝又慶典(AC長野パルセイロ U-18コーチ)
見る者に愛されたゆえん 心揺さぶるプレーを
―― 昨季はU-14の監督を務めていましたが、今季からU-18のコーチになりました。
僕もウノさん(宇野沢祐次監督)もFWとしてプレーしていましたが、もちろんFW以外の選手もトップチームに輩出したいと思っています。ユース年代で活躍できることに満足せずに、その上を目指せる選手を育てていきたいです。
―― ストライカーの育成にも力を入れていきたいところでしょうか?
今は指導環境が整備されてきている中で、子どもたちも純粋な子が多いので、言われたことをこなす能力は高いと思います。ただ、僕らの現役時代は自分も含めて、やんちゃな選手たちがプロになっていました。特にストライカーは自分のやりたいことをやり続けて、点を取ることが仕事でした。今の子どもたちはそこが弱いと感じていますが、それを伝えるのは簡単ではないし、4種(小学生)年代からの課題だと思います。そういう部分はバランスよく伝えながら、野生味あふれるストライカーが出てきてくれれば嬉しいです。
もともと長野県はおとなしい子が多く、主張的、主体的に動ける選手が少ない印象を持っています。ただ、長野県の指導者の中でもそういう課題・話題が出てますので、徐々に改善されていくのではないかと思います。
―― ご自身は静岡県で育ちましたが、当時の周りの選手たちをどう見ていましたか?
当時はやんちゃだらけでした(笑)。全員がFWをやりたがっていて、その中でFWに入れなかった選手がポジションを下げていくような感覚。今みたいに「ボランチをやりたい」とか「センターバックをやりたい」という選手は少なかったと思います。
―― 現役時代のストライカーとしてのこだわりはありましたか?
いくらチームが勝っても、1試合に2点以上取れないと機嫌が悪かったです。年齢を重ねて少しずつ考え方が変わってきましたが、それくらい得点に飢えていました。得点を取ることが全てで、自分が得点を取りたいから周りに「こう動いてほしい」と伝える。そうやって感情・要求を出すのは大事だと思います。キジさんもまさにそういう選手で、得点への執念が違いました。あの人とプレーして学んだことは大きかったです。
―― 木島選手は気が強いゆえに、退場することも多くありましたね。
そこは真似してはいけないですが(笑)、気持ちが強い選手は見ている人を惹きつけられると思います。パルセイロではあまり結果を残せなかったですが、最後まで足掻いていたつもりだし、「人の心を動かそう」という想いはありました。
指導者としては、誰からも愛される選手を育てたいですし、まずは愛される人間にならないと誰も応援してくれません。僕が引退してからも周りの方々に気にかけてもらえるのは、自分がやってきた行動や想いが少しでも伝わっているからだと思います。
―― ご自身がパルセイロに加入した当時は、特に個性的な選手が多かったように思います。
個性しかなかったですね(笑)。もちろん今の選手たちも個性を持っていますし、技術は僕らの時代より上をいっています。その中で自分の個性をどう見せるか、どう伝えるかが大事だと思います。
―― 引退後に指導者として戻ってきたのは、この地域やクラブへの愛着があったからでしょうか?
僕が長野を離れるときもクラブは声をかけてくれましたし、引退するときもそうでした。自分を受け入れてくれたことが嬉しかったですし、そのクラブ・パルセイロに恩返しするためにも、いままで培ってきた経験を伝えていきたいと思っています。この地域、長野が好きな気持ちも現役時代から変わらないです。
このクラブをとにかく良くしていきたいという気持ちがあります。まだまだ発展途上なので、逆に言えば無限大の可能性があります。やらなければいけないことが沢山あって、だからこそ自分にできることも沢山あるので、頑張れます。
―― 今季もトップチームの信州ダービーが行われますが、期待感はいかがですか?
ここまでの試合を見ていると、戦術的にはっきりとした戦いをしていて、面白いサッカーだと感じます。ダービーのプライドはもちろんですが、リーグ戦の一試合として考えても落としていい試合はないと思います。その中で悠紀さん(シュタルフ悠紀監督)はダービーに熱い想いがあって、それが選手たちにも伝わっています。応援してくださる皆様の想いを背負って戦って欲しいですね。
―― パルセイロは公式戦で15年間、信州ダービーでの勝利がありません。
なかなか高い壁ですよね。実力的には拮抗していますが、結果として及んでいないことを踏まえると、まだまだ足りていない部分があるのだと思います。パルセイロが盛り上がるためにも勝利が必要なので、僕も全力で応援します。
5月13日(土)は、多くの皆様に長野Uスタジアムに足を運んでいただき、大声援でパルセイロを勝利に導いていただきたいですね。よろしくお願いいたします。