INTERVIEW

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先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

丸山 朗(元長野エルザSC代表)& 町田善行(現AC長野パルセイロ代表取締役社長)

先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

11年ぶりの再会 熱き“信州ダービー”を再び――

―― 今年は天皇杯長野県予選でも対戦する可能性がありますが、過去の大会では2勝6敗と大きく負け越しています。

町田2010年はよく覚えています。アルウィンでの決勝で、土橋がイエローカード2枚で退場になって。本人は山雅から移籍してきたので、ショックが大きかったと思います。更衣室に帰ってきた時には、私と目を合わせずにすれ違って、2人ともモヤモヤしていました。結局その試合は負けてしまって、後に彼と話したら、あの時は「何も言えなかった」と。笑って話すわけにもいかないし、謝るのもおかしいですからね。

丸山私が選手だったとしてもそうなりますよ。山雅は2009年も優勝して、本大会で(浦和)レッズに勝っていますよね。パルセイロはアウェイで名古屋(グランパス)とか(北海道コンサドーレ)札幌を相手によくジャイアントキリングをしていましたが、もちろんそれも凄いことですが、山雅はホームで勝ったんです。あれを見た松本の方は、絶対にまたアルウィンに来たいと思ったはずです。

先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

町田パルセイロも去年の(川崎)フロンターレ戦は惜しかったですね。あの時は日程が詰まっていたので、どう戦うのか難しい状況でした。ただ、1-0でアディショナルタイムまで行ったので、私は「どうにか勝ってくれ!」と願っていました。そうしたら同点になってしまって、PKで負けて…。でも、素晴らしいゲームだったと思います。

丸山今まで本当に色々とありましたね…。パルセイロが地域に本当に根付くのはまだまだ先かもしれないですが、クラブとしては少しずつ山雅に近づいていると思います。

町田サポーターの方には「半分の歴史で同じところまで来ているんだよ、自信を持って!」となぐさめていただいたことがありました(笑)。

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―― 11年ぶりの信州ダービーに向けては、どんな心境ですか?

丸山本当に楽しみです。高校サッカーで言えば、北信から選手権に出たのは去年の市立長野の1回だけ。第100回大会で、ようやくです。市立長野にはパルセイロのアカデミー出身の選手が多くいて、芦田(徹)監督も元エルザの選手。何もなかったところに作ったエルザが大きくなってそういう成果に繋がったし、山雅にライバル視されているだけでも奇跡のように感じます。日本でたった一つの「本物のダービー」ですよ。松本は長野県の中心にありながら県庁所在地ではなくて、それでもサッカーでは長野県の中でNo.1だという想いがある。その熱量を私たちが受け止めるのが、この試合ですよね。北信の方々に「サッカーって面白いな」と感じてもらえる試合にして欲しいと思います。

先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

町田11年前までの信州ダービーでは選手たちが戸惑っていましたが、今の選手たちはみんな「本気で勝ちたい」と思っていますから。それはシュタルフ監督がダービーの本質を知っているからかもしれないですが、私も日本における本物のダービーだと思っていますし、サッカーを知らない北信の方でも「松本には負けるな」となるじゃないですか。信州ダービーはサッカーファンだけのものではなくて、そういった方々の想いも背負いつつ、サポーターの皆様、地域の皆様、監督スタッフ、選手をはじめ、両クラブに関わるすべての人々が、お互いをリスペクトし、フェアに正々堂々と戦う。そんな熱い試合になればと期待しています。

先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

―― シュタルフ監督はキャンプから攻撃的なサッカーを掲げていますが、チームへの期待はいかがですか?

丸山攻撃と守備は相反するもので、攻撃に出れば穴が出る。逆に守備を固めていれば、攻撃のチャンスは少なくなる。だから、攻撃している方が面白い。私は見ている人を楽しませるために、彼が言う攻撃的なサッカーで魅せてほしいと思います。チャンスがあれば、ピンチもある。もちろん失点もするかもしれませんが、その行ったり来たりが面白いですし、やっている選手たちも楽しいはず。バドゥ監督は攻撃ばかりで、守備の練習はしていませんでした。DF が何を練習しているかといえば、ヘディングシュートです(笑)。それで面白いサッカーができましたし、負ける時は負けますが、私はその方がいいと思っています。

先人を追い続けた “本物のダービー”の追憶

丸山ヨーロッパでも南米でも、お客さんはただ勝つことだけを楽しみにはしていないと思います。90分の中で攻撃があり、守備があり、1対1があり、グループ戦術があり、それを楽しんでいるんです。勝ち負けだけを決めるなら、極端な話、PKを5本ずつ蹴れば良い話ですから。サポーターはそうではなくて、90分間を楽しむためにお金を払っています。攻撃にリスクがあるのは百も承知のはずですし、その中で思い通りに楽しくやって欲しい。ただ、もちろん負けていい試合なんてないので、5-0くらいで勝ってほしいです。

町田アルウィンで5-1で勝ったこともありましたね。2005年の全社県決勝です。

丸山もちろん今回だって勝ちますよ。その上で、サポーターが何のためにお金を払って観に来るのかを考えて、価値のある試合にして欲しい。熱い本物のダービーを期待しています。