INTERVIEW

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気概はダービー全盛期のまま 山雅には負けられない

籾谷 真弘(AC長野パルセイロ 元選手)

かつてセレッソ大阪のユースとトップチームに所属し、ガンバ大阪と激突する「大阪ダービー」の熱狂に身を浸してきた。長野には6年間在籍し、北信越リーグとJFLで“ダービー全盛期”を経験。引退した今もなお、山雅への対抗心を忘れてはいない。

大阪を超える熱気 屈辱のオウンゴールも

―― ご自身は在籍している期間、何度も信州ダービーを経験しました。当時はどのような意気込みで戦っていましたか?

僕たちの時代は、仕事場からも「山雅だけには負けるな」と強く言われましたし、周りがすごくいい雰囲気を作ってくれました。選手たちも自然と気持ちが入りましたし、緊張感を持って戦えていたと思います。

―― 加入当初は、信州ダービーをあまり意識していなかったのでしょうか?

最初は意識していなかったです。加入してすぐにクラブやサポーターの方から地域的な背景や歴史を教えてもらって、自分自身でも調べていました。

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PROFILE
籾谷真弘(もみたに・まさひろ)
1981年、大阪府出身。セレッソ大阪U-18からトップチームに昇格し、2000〜01年の間在籍した。02年、群馬県リーグ1部のザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)に移籍し、03年から毎年昇格してJ2へ。2005年には36試合、06年には7試合に出場した。07年にAC長野パルセイロに加入し、長く主力のセンターバックとして活躍。自身最長となる6シーズン在籍した。2012年限りで現役を引退。現在は群馬県館林市を本拠地にサッカースクールを主宰している。

―― 北信越リーグや全社(全国社会人サッカー選手権)などで信州ダービーを重ねる中で、どのような熱さを感じましたか?

一つひとつのプレーにブーイングが飛んできたりして、とにかくサポーターの熱量が凄かったです。選手というよりもチーム全体が煽られるような感覚で、それが僕たちにハートに火をつけてくれました。やはり多くのサポーターの方に見ていただけると嬉しいですし、いい雰囲気で戦えて凄くありがたかったですね。県外で対戦した時にも、県内と同じような雰囲気を感じられました。

気概はダービー全盛期のまま 山雅には負けられない

―― 県外で記憶に残っているダービーはありますか?

2008年の全社の北信越大会決勝で、僕はオウンゴールをしてしまいました。そこで山雅のサポーターが「籾谷山雅!」と歌っていたのをよく覚えています…めちゃくちゃ煽られました(笑)。

―― その試合は1-2で敗れましたが、ダービーにおいては勝敗による一喜一憂も大きかったのでは?

そうですね。当時は負けた試合のほうが多かったので、勝つ喜びよりも負けた悔しさのほうが残っています。終了間際にゴールを決められることも何回かありましたし、僕はDFの選手なので「なんであんな失点をしたんだろう…」と今でも思い出します。

気概はダービー全盛期のまま 山雅には負けられない

―― ご自身はセレッソ大阪のユースとトップチームでもプレーしました。育成年代から大阪ダービーを経験してきて、信州ダービーもすんなりと受け入れられましたか?

たしかに大阪ダービーは気持ちが入りましたが、信州ダービーのほうが熱かったと思います。選手だけでなく周りもすごくて、「これがダービーなんだ」という思いを強く感じました。というのも大阪は大都市ですけど、長野はより身近にそういう熱気があって。実際にパルセイロに在籍している6年間、松本には試合以外の私用ほとんど行ったことがなかったです。だって怖いじゃないですか(笑)。

―― 山雅サポーターの雰囲気はどのように感じていましたか?

試合中はもちろんですし、試合前から怖さがありました。選手たちは平常心でやろうとしていましたが、あれだけ煽られると平常心を保つのが難しい部分があります。特にアルウィンだと足が重たく感じたり、足がつりそうになったり。逆にホームは自分たちのペースで進められましたし、ホームとアウェイでかなりの差があったと思います。

―― 特に印象に残っているエピソードはありますか?

両チームとも元Jリーガーが多かったので、負けられないというプライドが強かったと思います。ヒロさん(土橋宏由樹)もその一人でしたが、山雅からパルセイロに来た時は、正直「なんやねん」と(笑)。彼はスマートな人間で僕たちとは少し違う空気を感じましたが、プロでの経験を見習う部分が大きかったです。最終的にはチームに良いサイクルが生まれていったと思います。

気概はダービー全盛期のまま 山雅には負けられない

―― パルセイロは信州ダービーこそ負け越していたものの、リーグ戦の順位では上回っていました。

たしかに北信越リーグでは巧いし強いチームでしたが、「最終的に勝負弱かった」という印象です。その中でダービーは年間の1試合に過ぎないのですが、一番楽しみにしていた試合でした。北信越リーグは相手チームのサポーターが少なかったですけど、プロでやっていた時はサポーターに囲まれているのが日常。信州ダービーはそういう雰囲気を思い出させてくれますし、(陸上の400メートルトラックがない)専用球技場でやれるのも良かったです。

―― 加入初年度の2007年から、6,000人を超えるサポーターが集まっていました。

鮮明に覚えていますし、地域リーグでそんなにお客さんが入ることは今でも考えられないですよね。今年も久々に信州ダービーを見られるので、本当に楽しみにしています。